以上が赤法花村の五人組帳の内容である。この五人組帳の内容はその領主と地域によって多少の相違はあるが、いずれも準公法的性格を持ったもので、これに違背することは為政者の施政方針に逆らう者として処断された。そこでいまその条目を通覧すると、まず第一条において、お上(かみ)からのお達しや法度(はっと)を堅く守るべしといって、民衆を抑える姿勢を示し、次に忠、孝、悌の道を諭し、その徳目を行うことを奨励し、これに反して不忠、不孝、不悌の者には説諭を加え、なお説諭に従わない者があれば申告せよと勧め、儒教政治の要諦である人倫の大義に重きをおき、民衆に対する教化的条目を劈頭にかかけ、以下切支丹宗取締、銃砲取締、人身売買禁、田畑譲渡の制限、質地に関する規制、博奕等風俗に関する規制、旅行者に対する取扱い、火災、喧嘩などに対する対応など、各方面にわたる農民の行為に干渉を加え、最後に年貢米に関しては七か条の項目を設け、遂には俵の作り方にまで指示しているなど、いかに支配階級の年貢米に対する関心が深かったかを、この五人組帳を通じて知ることができよう。