鬼怒川の鮭漁(カチガケ漁)
東・西板戸井間を流れる鬼怒川では、禁漁となる昭和三十八年(一九六三)ごろまで、秋から冬にかけてカチガケ漁で鮭を捕っていた。『利根川図誌』には、「布川近辺で捕れた鮭が一番美味である」と書かれているが、板戸井の人たちは「ここで捕れた鮭の方がうまかった」と一歩も譲らない。
カチガケ漁は、正式には徒立網(かちたてあみ)漁といい、二人一組で行われる。まず舟に据(す)え付けた木箱の上に立って下流を見つめ、鮭が遡(そ)上してくるのをジッと待つ(木箱の中には火鉢があって、暖が取れるようになっている)。鮭が上ってくるのを発見するが早いかドテラをパッと脱ぎ捨て、素っ裸で網の両端を持って川に飛び込む。網で鮭を取り囲むと、一人が網の両端をあわせ持っており、もう一人が網を魚体に絡(から)げて抱きかかえるようにして生け捕りにする。
原始的な漁法で能率的ではなかったが、魚体を傷めることがなかったので、高値で買い取られたという。
鮭漁を行っていたあたりから下流を見る | |
鮭漁を行っていたあたりから上流を望む | |
明治13年当時の板戸井村、大木村、立沢村、大山新田村(明治13年作製「迅速測図」から) | |
東・西板戸井周辺▶昭和22年 | |
東・西板戸井及び松前台五丁目▶昭和63年1月11日 |