米ノ井山龍禪寺

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 稻戸井村大字米野井に在る天台宗の寺院で、守谷の西林寺に屬して居る。本堂も茅葺屋根の棟高く堂々たるものであるが、境内一隅に建立せる三佛堂は更に特色ある古建築であつて、内には彌陀釈迦彌勒の三尊を安置して居る。傳に本寺の開基は延長二年傳譽阿闇梨といひ、その後、承平七年二月に將門が大に修理の工を起し、新に山門を營み、更に別に一宇を建てたといひ、續いて建久三年に至り、源賴朝が又伽藍の頽廢を嘆き、千葉常胤に命じ舊觀に復せしめたといつて居る。德川氏の世に至つては、已に天正十九年十一月に、拾九石參斗の朱印地を寄せられ爾來繼續幕末に及んだ。
 三佛堂の當時の建造物の根幹を成す部分は今に存じて往時の壯觀を偲ぶに餘りあるが、これは明治二十一年古社寺保存法の制定以前に已に内務省より保存料金壹封の下附があつたので、その際に於て無理解なる修理を施したが爲めに、痛く特色ある舊態を損ぜしめたのは寧ろ嘆かはしい事とする。