桔梗塚

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 今稻井驛に近く米野井の畑地に介在して一小家として名殘を止めて居るが、もとは桔梗ケ原といつたほどに相當の地域であつたと聞く。衰草に埋れて一基の五輪が建つて居る。即ち將門の妾に桔梗なるものあり傾國の美と傳ふ。秀郷に誘はれて將門の祕を通じ將門を討たしめたといふ桔梗亦殺さる。その恨深く此に留まつて桔梗をして花を着けしめぬと傳へる。高田與淸歌あり。
 通ふ名の人をうれへて咲き出ぬや 問はん花なき桔梗ケ原