守谷町の南を境する利根川は広大な河川敷を持ち、野木崎新山で台地斜面より渚線まで930m、高野根切で800mある。そのうち台地下より堤防までは各々600m、650mであり、そのほぼ中央を大野川が排水路として取手市戸頭まで通じている。
河川は洪水の度に土砂を両岸に堆積し、流路に沿って自然堤防(しぜんていぼう)と呼ばれる微高地をつくっていく。そのため自然堤防と台地の間に後背湿地(こうはいしっち)と呼ばれる排水不良の低湿地を生じる。
現在は自然堤防の付近に人工の堤防が築かれている。砂質の微高地は多く畑となり、後背湿地は水田となった。
守谷町の利根川河川敷では、古くから野木崎上流部より鬼怒川までの地域は堤防の完備と地元の排水努力により大野川左岸は水田、右岸は畑地となっていた。なお大木南端~白寿荘の間にはかつて低い砂丘があり、鬼怒川下流の左岸に見られる砂丘の一つであった。野木崎地先より下流部、現在の常磐自動車道より下流は、かつては堤防もなく一部に林や畑はあったが大部分は湿原であった。現在は堤防も築かれほとんどが野菜畑や牧草地として利用されているが、増水時には水を流し込み本流での洪水を防ぐ稲戸井(いなとい)遊水池となっている。
この遊水池は、台地の斜面林、大野川左岸の湿原・湿生林、右岸の高地と堤防を含んだ広い草地、さらに利根川や大野川の水辺と、非常に変化に富んだ自然環境を備えている。
植物では特に大野川左岸の地域にノカラマツ、ハナムグラ、キンガヤツリ、チョウジソウ、ノウルシなどの希少植物が生育し、場所は異なるがタコノアシも見られる。昆虫では近年数が少なくなったウラゴマダラシジミ、オオミドリシジミ、テングチョウ、ヒオドシチョウ、ミドリヒョウモン、ミヤマチャバネセセリなどを確認している。鳥類ではワシタカ科を例にとればオオタカ、チュウヒ(何(いず)れも危急種)をはじめ10種の餌場あるいは越冬地であり、あるものは斜面林で繁殖していることを確認した。またタカの渡りでは県内の最大ルートであることを発見している。
稲戸井遊水池は守谷町全面積の十数%を占めており、町民の生活環境に大きく寄与している。特に優れた自然を有し住宅地にも近い大野川左岸地域はもとより、その自然環境には十分な考慮を払う必要があると考える。
鬼怒川右岸に広がる西大木の水田地帯は、かつて堤防が鬼怒川側のみの時代には菅生沼から続く湿原であった。集落は保食(うけもち)神社に近い鬼怒川河畔と、利根・鬼怒両川の合流点の剣先(けんさき)に近い大木流作のみで、わずかな林といくつかの池沼が見られた他はヨシ、ガマ類、オギなどの湿原が広がる中を幾筋かの小川が流れていた。現在、前者の集落は台地上に移転し、一方、昭和21年(1946)には敗戦により中国東北(旧満州)より引き上げた大八州(おおやしま)開拓団が入植している。しかし昭和30年(1955)以後、菅生沼南端に法師戸(ほうしど)水門が設けられ利根川に堤防が完成するまでは再三の洪水に悩まされた。堤防完成後も遊水池であり、現在の美田も洪水時には野田市飛地木野崎(きのさき)の溢流堤(いつりゅうてい)からの浸水を免れないのである。