フィールドガイド⑩ 西板戸井(にしいたとい)

116 ~ 117

 鬼怒川右岸に近い台地上には平地林、屋敷林、畑が混在し、特に平地林と屋敷林の観察に適しています。台地の北側は低地となり、道路を境に連なる工業団地は、かつての水田と谷津でした。現在も台地の端に谷津の末端(L)が残されています。台地上の表通りに屋敷林を連ねる集落から直角に工業団地方向に通じる小路は、昔の水田へ通じる農道でした。


コース:ゲートボール場(A)の南側、鬼怒川掘削工事の土砂と伝わる小丘上に建つ山王神社(B)を参拝し、平地林(C)中の小路へと辿(たど)ります。坂を降りると工業団地前道路(D)です。歩きながら左手の谷津や林を観察します。再び台地上に登り(E)、畑中の路(F)から表通り(G)、更に屋敷林の路(H)→平地林(I)→谷津(J)→屋敷林(K)→ゲートボール場(A)と一周します。距離約1.5km(地図参照)


植物:平地林は薪炭農用に作られたアカマツ・クロマツ、コナラ・クヌギ林です。境界にはスギ・ヒノキ・サワラなどが列植されましたが、シラカシ・スダジイ・ケヤキ・イヌシデ・ムクノキ・コブシ・ヤマザクラ・オオシマザクラ・タブノキなどが自生し高木層をなしています。一部は苗木畑として使用され、カヤ・イヌガヤ・タカオモミジ・トウカエデ・アオギリ・ヒイラギなどが列状に残っています。林内にはアズマネザサの繁茂が多く、少ない部分にはヤマコウバシ・ヒサカキ・ウシコロシ・ハナイカダ・アオキ・ヤツデなどの低木が見られ、林床にはヒトリシズカ・フタリシズカ・イチヤクソウ・マンリョウ・ヤマユリなど近年少なくなった種があり、平地林(I)の縁部ではイヌザクラが多く見られます。


昆虫:コナラ・クヌギ林では、クロナガオサムシ・ヤママユ・ミドリシジミの仲間など森林性の昆虫が見られます。コナラなどの樹液には、ゴマダラチョウ・ヒカゲチョウ・サトキマダラヒカゲ・スズメバチ類・カブトムシ・ノコギリクワガタ・コクワガタ・ヨツボシケシキスイ・ヨツボシオオキスイなどの姿を観察することができます。林縁部では、アカタテハ・ルリタテハ・イチモンジチョウ・ハグルマトモエ・アオオサムシなどが見られます。


鳥類:平地林では冬季にヤマガラ・シジュウカラ・エナガ・メジロ・ルリビタキなどの小型鳥類が多く、アカゲラ・アオゲラ・ヤマシギやフクロウも見られています。屋敷林ではオオコノハズクなども確認されています。冬は銃猟が行われるので、大型鳥類は特に少なくなります。谷津ではホオジロ科、アトリ科の鳥が現れます。


建築物:集落は通りに面して並び、背後に納屋があり、屋敷間はケヤキ・シラカシなどの境界林で区切られ、その間に背後の耕地へ続く小径(こみち)があります。農家の配置、機能を知る観察路と言えます。ゲートボール広場北側の火の見やぐら付近は、存在する樹木から過去に社寺があったと推測されます。山王神社(B)は鬼怒川を背にし河道掘削土と云われる小丘の上にあります。社殿はなく、三峰神社、庚申塔、青面金剛、経塚などの碑が屋根下に安置されています


石仏碑:山王神社の経塚は寛文(1661-1673)、愛宕山神社と道祖神は寛政(1789-1801)です。


マナー:公的なトイレや駐車場などはありません。表の道路以外は全部農道です。御迷惑にならぬ様に気をつけてください。平地林は人の通行が少なく、特に冬季は銃猟が行われ、モチなどを使った密猟者もよく入り込みます。安全に注意し、違法行為を発見したら警察に通報して下さい。