地形・地質

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長野市は地形的・地質的に中央部の長野盆地と西側の西部山地、東側の東部山地に大別される。

 長野盆地の西部に広がる西部山地は、新第三系からなり、それらをおおって飯縄(いいづな)火山の噴出物や湖沼性の堆積(たいせき)物などの第四系が分布している。西部山地を構成する新第三系の大部分は、今からおよそ1,000~200万年前、新生代第三紀の中新世から鮮新世にかけての海成の堆積岩類で、泥・砂・礫(れき)が堆積固結した泥岩・砂岩・礫岩である。一部には当時の火山活動による火山噴出物の堆積した凝灰(ぎょうかい)岩・凝灰角礫(かくれき)岩なども含まれる。それらは岩相により、下位から上位へ浅川泥岩層・裾花(すそばな)凝灰岩層・論地泥岩層・大久保砂岩泥岩層・荒倉山火砕(かさい)岩層・荻久保砂岩泥岩層・猿丸層に分けられている。

 第四系は湖沼性堆積物や飯縄火山の噴出物などで、新第三系を不整合におおって分布する。湖沼性堆積物は礫・砂・シルトなどからなり、ほかに地すべりや崖錐(がいすい)性堆積物などの崩積性堆積物がある。飯縄火山噴出物は輝石安山岩を主とし、角閃(かくせん)石安山岩からデイサイト・玄武岩をともなう溶岩と火砕流堆積物から形成されている。

 東部山地は新第三系から形成されているが、西部山地と比較すると時代的・地質的にかなりの差異が認められる。東部山地を形成する新第三系は西部山地よりも古く、主として中部中新統の火山岩類・凝灰岩類・泥質堆積岩類・深成岩類などで、中部中新統は下位から上位へ内村層・別所層・一重山礫質砂岩層に区別され、これを貫いて石英閃緑(せんりょく)岩・ひん岩などの深・半深成岩類が分布する。その年代はカリウム-アルゴン年代によって2.1Ma(210万年)と測定されている。さらに、これらの第三系を不整合におおう鮮新世の安山岩類と、完新世の皆神(みなかみ)山溶岩ドームが分布する。皆神山溶岩ドームのカリウム-アルゴン年代は0.35Maである。


写真1-1 皆神山溶岩ドームを中心とした東部山地

 中央部の長野盆地は千曲(ちくま)川の下流にある盆地で、最大幅10km、長野市を中心に南西から北東の長軸をもつ狭長な盆地で、面積はおよそ300km2、標高330~360mで、その差がきわめて小さく低平である。日本の中央高地内陸部の代表的な盆地である。このなかを千曲川が北流する。千曲川は東部山地と西部山地とのあいだを縦谷をつくって流れ、更埴地域で大きくうねりながら比較的ゆるやかに流れている。千曲川に合流する犀(さい)川は、横谷として西部山地を削り、その堆積物は盆地の西側に川中島の扇状地を形成した。そのため、千曲川の流路は東部山地の縁に押しやられている。千曲川が盆地の東側を流れているため、平野部の広がりは千曲川の左岸側で広く右岸側で狭い。

 この盆地は第四紀中ごろに形成された内陸盆地で、大部分が周辺山地から流下する河川による扇状地堆積物や洪水時に氾濫(はんらん)して堆積した氾濫原堆積物によって形成されている。これらは下位から上位へ西河原層・豊野層・南郷層・上部更新統および完新統に区分されている。


写真1-2 第四紀中ごろに形成された長野盆地

 盆地に接する西部山地の第三紀層地帯には盆地の長軸と平行した多くの活断層が発達しており、県下でも屈指の活断層密集地帯となっている。通産省地質調査所では数本のトレンチを掘り、活動年数などを調査しているが、もし活断層が活動したとすれば、これにともなう地震が発生し、長野市内に大きな被害を及ぼすことが予想される。十分な防災対策が望まれる。