土壌

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長野市域は地形的にみると、山地と平坦(へいたん)地に分けられる。山地は森林が多く、それを作る土壌は褐色森林土で、飯縄(いいづな)火山を除く山地全般に広く分布している。飯縄火山周辺には火山灰など火山噴出物の風化によって生じた黒色土が広く分布し、東部山地・三登山山地などにも見られる。


写真1-3 飯縄山国有林の適潤性黒色土に植えられたスギの人工林

 褐色森林土・黒色土のうち、斜面の中腹から沢沿いや山麓(さんろく)の緩斜面に見られる適潤性土壌や弱湿性の土壌は酸性が弱く、植物養分・水分などに恵まれた肥沃(ひよく)地で生産力がもっとも高い。また、尾根すじを中心とする乾性の土壌では酸性がやや強く、植物養分に乏しいため、一般に生産力が低い。

 また、飯縄山麓の湖沼地帯では、ハンノキ林の下にミズバショウを含む湿性の植物群落があり、泥炭土ができている。この泥炭土は、水分が過剰で酸素不足におちいりやすく生産力が低い。

 西部の茶臼山山地の丘陵性の尾根に沿って分布する赤色土は、褐色森林土の乾性土壌と似た性質をもち、生産力は乏しい。

 長野盆地周辺の一部に見られる未熟土は、本来の土壌ができあがっていないため、生産力はきわめて低い。

 いっぽう、平坦地には低地・丘陵地と山地の一部が含まれ、農耕地に利用されている。この地帯で標高の高いところには黒ボク土が分布している。この土壌は火山灰が堆積(たいせき)してできたもので、表面は黒色から黒褐色の腐植層であるが下層は黄褐色を呈している。

 黒ボク土は軽く、孔隙(こうげき)率が高いので透水性がよく、また、保水力が高いので高原野菜の産地となり、水の便に恵まれた場所は水田化され水稲が栽培されている。主な分布地域は小野平・皆神山の山頂・飯縄山の南麓(なんろく)一帯などである。


写真1-4 飯綱高原の黒ボク土で栽培されている高原野菜

 また、山地から丘陵地にかけては黄色から黄褐色の細粒質で緻密(ちみつ)な土層から構成された褐色森林土が広く分布している。とくに西部山地は第三紀層の泥岩を母材にしている関係で、粘性がきわめて強く耕作は容易でない。また、保水力・透水性ともに小さいので急傾斜地は雨による水食を受け、しばしば土壌流亡による問題を起こしている。

 沖積低地の自然堤防には全層が褐色を呈する褐色低地土が帯状に認められる。この地帯は地下水が比較的低く、また下層に砂礫(されき)層があるなど排水がよいので、集落が発達したり果樹栽培がおこなわれている。また土層が厚い岩野地域などでは長芋など野菜作りに適している。

 低地の大部分は灰色低地土で占めているが、なかには灌漑(かんがい)水の影響を強く受け、作土から溶脱した鉄・マンガンが下層に集積している低地水田土と、地下水の影響を強く受けて生成した泥炭土、グライ土が分布している。

 泥炭土は東部山地の後背湿地に位置する清野から川田・綿内にかけて多い。排水工事が進み、多くは水稲が栽培されるようになったが、まだ一部蓮田(はすだ)として利用されている。

 グライ土は扇状地の末端や河川流域の後背湿地に多く、信田の聖(ひじり)川流域や浅川・駒沢川・保科川、蛭(ひる)川・神田川の下流域などにある。土地利用は、排水が悪く過湿のために畑作物の栽培には適さない。しかし、水稲にとっては非常に適した土壌である。