気象

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長野県は本州中部の中央高地に位置し、周囲を高い山々に囲まれ、海から離れた内陸である。長野市域もそのなかにあって盆地・谷・山地などが入り組むため、長野市の気候は、地域差の大きい内陸性気候を示す。

 その特徴の一つは、年平均気温が低いことである。長野地方気象台の年平均気温は11.5℃であるが、これは東北地方の気温とほぼ似ている。また、長野盆地周辺の山間地でも標高が高い所ほど気温は低くなっていくが、標高800m以上の平均気温は北海道並みである。春の訪れが遅く秋の立つのが早いといった季節変化は、平均気温の低いことの証(あかし)である。

 また、気温の日較差(にちこうさ)・年較差(ねんこうさ)が大きいことも特徴である。長野盆地でも夏の昼間は気温がたいへん高くなり、海岸地方ともあまり違いはないが、朝晩はいたって涼しくなり、しのぎやすい。冬の朝の冷えこみはきびしい。

 長野地方気象台における年間の総降水量の平均値は938.3mmとたいへん少なく、国内では北海道の東北部につぐ少雨地帯である。しかし、冬季の降雪量は比較的多く年平均173cmで松本市の90cmの倍近くになっている。北西の季節風が強いときには、長野盆地北部の平地にまでかなりの雪を降らせる。


写真1-7 冬季の降雪量が多い長野市北部
(善光寺東側)

 長野県全体として日照時間の多いことも特徴である。1951年(昭和26)から30年間の平均値でみると、県内では飯田市・松本市など年間2,000時間を超えるところが多く、全国的にみても多い。長野市は1,982時間とやや少ない。しかし、月別の日照時間を飯田市と比べてみると、冬は飯田市の方が多いが、春から夏にかけてはほぼ同じか長野市の方が多く、この豊かな日照がリンゴ・モモ・ブドウなど果樹栽培の多い一つの要因となっている。

 湿度は年平均73%で全国的にみてもとくに低くはないが、夏の7~8月は比較的低く、熱帯夜はほとんどみられない。また霧がかかりやすく、発生場所からみると盆地霧(放射霧)、川霧(蒸気霧)、山霧(滑昇霧)が多い。


写真1-8 川中島合戦で有名な千曲川の川霧

 長野県の中部では夏の強い日ざしによりしばしば熱的低気圧が発生するが、この低気圧に向かって県南部では南風が、北部では北風が吹く。これは長野県特有のさわやかな風で、緑陰の涼風として暑い夏をしのぎやすくしている。

 南北に長い長野県では、大局的にみると北部は日本海側気候、南部は太平洋側気候に属している。長野市域も気候としては犀(さい)川をはさんで北部は日本海側、南部は太平洋側の影響を受けやすい。両気候区の境界は、一つの線で画することはできないが、一般には長野盆地と松本盆地北部を結ぶ線である。その境目にあたる地域はある幅をもっていて、北西季節風の強弱により南北に移動する。したがって、気候区の違いは冬季にいちじるしくあらわれる。

 長野地方気象台における観測の平年値からみると、降水量の年変化では太平洋側気候の型に近いが、降水日数や日照時間の年変化には日本海側気候の影響があらわれているなどから、長野市の気候は両者を複合したような中間型であるといえよう。