市域最南部の高遠山の山稜は、蛭(ひる)川・神田川と神(かん)川水系の傍陽(そえひ)川との分水界をなし、長野市と小県郡真田町との行政界となっている。この山稜から北西に伸びる山脚は、800m以上の高度を維持したまま松代市街地の南方に迫り、そこから急激に高度を減じて、千曲川氾濫原(はんらんげん)下に没する。山脚の末端には薬師山(438m)、妻女(さいじょ)山(410m)、象山(476m)、舞鶴山(560m)などが突起し、あたかも岬のように盆地に突き出している。
この山地を構成する岩石は主に第三紀中新統の内村層および別所層に属する頁岩(けつがん)・砂岩・凝灰岩などの堆積(たいせき)岩類で、部分的に閃緑(せんりょく)岩類およびプロピライトが貫入している。山容は北方の奇妙山地・妙徳山地と比較しておおむねゆるやかであり、とくに高遠山から地蔵峠にかけての海抜1,000m以上の頂稜部は、尾根が広く高さがそろった小起伏面の発達が特徴的である。これらの山頂小起伏面とは別に、山腹にも稲葉付近をはじめいくつかの緩やかな傾斜部が分布している。
松代市街地の南東にそびえる皆神山は、標高659m、盆地底からの比高250mにすぎない小山岳であるが、東部山地のなかでははなはだ特異な存在である。特異性はこの山のドーム状の形態や周囲の山稜からの地形的な孤立だけでなく、直線的な山ひだの発達した周囲の山地と対照的に、稜線や谷の乏しい平滑な山腹地形にもある。皆神山は、第四紀更新世に堆積作用の進行していた長野盆地の一隅に噴出した輝石安山岩の火山であり、二つの山頂からなる溶岩円頂丘(溶岩ドーム)として誕生したものであるが、侵食がおよんでいないため火山の原形をとどめていることが上記の地形的特性となっている。溶岩ドームの形成は35万年前ごろとされ(森本ほか,1966)、山頂部には風化土壌が発達し、火山体の最下部(山麓部)は扇状地性堆積物で埋められている。