裾花川扇状地

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裾花川扇状地は旭山北麓(ほくろく)の里島付近を扇頂に東から南の方向に向かって長野市街地をのせ、扇端は南から南東では犀川扇状地に、東部では千曲川氾濫原に接する。長野中心市街地では10/1,000程度の勾配(ばい)で緩く傾斜している。市街地を流れる北八幡川、南八幡川に古川、計渇(けかち)川などの水路の方向が、扇状地の傾斜方向を示している。

 これらの水路は主に裾花川の河道跡の微低地帯に導かれたものである。南北方向に扇状地を横断していくと、比高2~3mのいくつかの起伏があることが認められる。そして、これらの起伏は扇状地の傾斜方向(東から南東の方向)に長くつづいている。南県(あがた)町から新田町、商工会議所を経て県道中村長野線沿いにつづく低地帯、岡田町-末広町-栗田の低地帯などはかなり明瞭で、これらはかつて裾花川が扇状地面を浅く刻んで流れた痕跡である。東方の高田・長池付近には、裾花川旧河道沿いの緩い氾濫原が伸びており、表層は砂・シルトから構成されている。これは千曲川流路の東方への移動にともない、裾花川扇状地がその扇端を伸ばしていった部分である。裾花川扇状地南縁の若里、南高田、南長池付近には犀川-千曲川の側方侵食によってつくられた比高2~4m程度の低い崖(がけ)がつづいている。


写真2-21 裾花川の流路跡(上高田)

 裾花川扇状地の左翼は、善光寺下-平林-北尾張部の線で、この部分は北方の浅川扇状地との裾合(すそあい)谷(二つの扇状地が接してつくられた浅い谷)となっている。両側が粗粒の扇状地礫層からなっているのに対して、この部分だけは砂・シルトの厚い層が分布し、地盤は軟弱である。

 扇頂部にあたる市街地西部では、裾花川に沿って数段の河岸段丘が分布する。最高位の段丘は往生地(おうじょうじ)面で、両岸に往生地と平柴(ひらしば)が立地し、さらにその下位に新諏訪をのせる第2段丘、長野商業高等学校のある第3段丘、県議員会館の建つ第4段丘がある。これらはともに裾花川の旧扇状地面である。河床からの比高は第1段丘面が80~100m、第2段丘面が15~20m、第3段丘面が12~15m、第4段丘が4~6mである。第2段丘以下の下流方向への追跡は西長野・南長野までは可能であるが、その東では湯福川扇状地の北方からの押し出しのため困難になる。第2段丘と第3段丘の段丘崖は、城山台地の東側の急崖に収斂(しゅうれん)していると考えられる。

 裾花川の右岸には金山沢の沖積錐があって、そこに杏花(きょうか)台・平柴の両団地がつくられている。金山沢によって深く刻まれ、下部が平柴段丘の段丘崖によって切られていることから見て形成は古い。


写真2-22 裾花川谷口の段丘地形