若穂の扇状地と松代の扇状地

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若穂の扇状地は、保科川および赤野田川が東部山地の湾入部に堆積をおこなってつくった、ラッパ形の狭小な扇状地である。保科川上流部では沿岸に2段、局部的には3段の河岸段丘が発達するが、久保より下流には下位段丘面に連続する扇状地面が広がっている(町田,1961)。扇端は塚本付近で千曲川氾濫原の後背湿地に接し、明瞭な傾斜変換線を示す。扇状地の上流側では両河川が扇状地を浅く刻んでいるが、矢原付近より下流では保科川が天井(てんじょう)川を形成し、この天井川が千曲川氾濫原に伸びている。赤野田川は天井川の状態がさほど顕著ではない。

 松代町付近には、東部山地から流下する藤沢川・蛭(ひる)川および神田川の3渓流の堆積によって一連の合流扇状地が形成されており、松代城下町はその扇端部に立地している。扇端部は非常に緩やかな傾斜で千曲川氾濫原に接し、一部は自然堤防に連続し他の一部は千曲川の旧河道をおおっている。

 藤沢川および蛭川の扇状地は、皆神山背後の上流部にも分布している。皆神山の上流側では下流側に比べて扇状地面はいちじるしく急傾斜である。そして、藤沢川・蛭川が扇状地面を下刻して2段の段丘地形を形成している。牧内・桑根井・平林などの集落は上位の段丘面上にある。下位段丘面は皆神山の下流側に連続し、松代城下町の南東部をのせる旧扇状地面を展開している。

 神田川流域には、同心町・市場などをのせる旧扇状地面が広がっている。旧扇状地が粗粒の礫(れき)層から構成されるのに対して、松代城下町の中心部から長国寺にかけての新期扇状地の部分は細粒の砂・シルトの厚い層からなっている。藤沢川・蛭川の堆積作用はなお活発で、扇央以下では天井川をなしている。

 東部山地の山麓(さんろく)部にはさらに、上記の扇状地より小規模で急勾配の堆積地形(沖積錐)が発達している。もっとも規模の大きいものが妙徳山東麓の山新田から大柳にかけて見られ(写真2-20)、淘汰(とうた)の悪い角礫と砂質の土壌から構成されている(町田,1961)。より小規模のものが若穂地区の清水・小出や松代町東条などに多数分布する。これらは土石流などによる崩積性の堆積地形とみられる。