長野盆地の西側に広がる西部山地は、新生代第三紀の中新世中期から鮮新世にかけての海成層と、これを不整合におおう飯縄(いいづな)火山の噴出物や湖沼性の第四紀の陸上堆積(たいせき)物から構成されている。新第三紀層は、新生代第三紀中新世中期から鮮新世(およそ1000万~200万年前)にかけての海成の堆積物で、泥・砂・礫(れき)の固結した泥岩・砂岩・礫岩である。一部には当時の海底火山の活動によって火山噴出物が堆積した凝灰(ぎょうかい)岩・凝灰角礫(かくれき)岩などがある。下位から1)浅川泥岩層、2)裾花凝灰岩層、3)論地泥岩層、4)大久保砂岩泥岩層、5)荒倉(あらくら)山火砕岩層、6)城下砂岩礫岩層、7)荻久保(おぎくぼ)砂質泥岩層、8)猿丸(さるまる)層に分けられている。このうち2)裾花凝灰岩層と5)荒倉山火砕岩層は、流紋(りゅうもん)岩・安山岩の火山噴出物からなり、他の層には海生の動物化石が多く、7)荻久保砂質泥岩層はとくにいちじるしい。
第四紀層は第三紀層を不整合におおう未固結な礫・砂・シルトの堆積物で、更新世前期(約180万~70万年前)の堆積物は、水内層、灰原層、高野層などの地層で西部山地縁辺や丘陵部に小規模に分布している。更新世中期~後期(約13万~1万年前)には飯縄火山の活動があり、その火山噴出物が飯縄山を中心にして広く分布し、前述の新第三紀層や更新世前期の地層を不整合におおっている。このほか地すべりや崖錐(がいすい)などの崩積堆積物も小規模に分布する。
西部山地の新第三紀層は、北部と南部でその地質構造がかなり異なっている。北部の浅川や裾花(すそばな)川流域では、全体として、走向は北東から南西方向で、北西に傾斜した単斜構造を示すが、南部の犀(さい)川流域では、北東から南西方向の軸をもつ褶曲(しゅうきょく)構造が発達するため、地層の傾斜は場所によって異なっている。また、長野盆地に接する付近には、盆地の長軸にほぼ平行した断層が発達している。これらは長野盆地の形成に関係した断層で、第四紀層を切る活断層も多く見られる。