長野盆地の東方に連なる東部山地は、西部山地と異なり山地の標高が高く急傾斜の斜面が多い。山の稜線は明瞭で、やせ尾根が多く、奇妙山や尼厳(あまかざり)山などの山腹には比高が大きな急傾斜の露岩地帯が多い。東部山地は、中部中新世~鮮新世(約1000万~200万年前)の新第三紀層と、これを貫く深成岩類、火山岩類、第四紀層から形成されている。
中部中新統は、西部山地を構成する第三系よりも古い時代のものであり、下位から1)内村層、2)別所層、3)一重山礫(れき)質砂岩層に区分されている。1)内村層は北信地域の新第三系の最下部層で、海底火山の噴出物からなり、変質作用によって緑色化しているので、グリーンタフ(緑色凝灰岩)と呼ばれている。本地域ではデイサイト質の凝灰角礫岩を主とした火砕岩と黒色泥岩からなる。火砕岩の多い部分と泥岩の多い部分に分けられ、両者は指交関係である。2)別所層は黒色泥岩を主とする地層で、一部に安山岩質の火砕岩や砂岩をはさむ。魚のウロコや有孔虫などの化石が多い。ときにはクジラなどの大型哺乳類の化石も産出する。3)一重山礫質砂岩層は、千曲川沿いに小分布を示している。砂質泥岩・砂岩を主とし、一部に礫岩をはさむ。松代町薬師山・妻女山付近にわずかな分布が見られるだけである。青木層に対比されている。
内村層・別所層を貫いて石英閃緑(せんりょく)岩~花崗(かこう)閃緑岩の深成岩が分布する。この深成岩は西南方の美ヶ原(うつくしがはら)(松本市ほか)周辺から下諏訪地域にかけて広く分布する石英閃緑岩体と一連のものと考えられている。貫入の時期は中新世中期ごろと考えられている。
鮮新世(約520万~180万年前)の火山岩類は、中部中新統を不整合におおい、牧内安山岩、保基谷岳火山岩、奇妙山火山岩に区分されている。
東部山地の第四系は、下位の新第三系を不整合におおい、狭い分布を示している。更新世前期(約180万~70万年前)に湖に堆積した滝本層が堆積した。更新世中期(約70万~13万年前)には皆神山火山の活動があり、その火山噴出物が皆神山を中心に分布している。菅平高原の四阿(あずまや)火山や西部山地の飯縄火山も同時期の活動である。第四紀完新世(今から約1万年前以降)には、山地部では崖錐(がいすい)堆積物や谷底埋積堆積物が堆積した。この時代は長野盆地が形成された時代でもある。
東部山地の新第三系は、全体的に、北西に傾斜する単斜構造を示し、褶曲(しゅうきょく)や断層の多い西部山地とは趣を異にしている。