1 地質の概要

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 長野盆地の西側に広がる山地は新第三系からなり、これらをおおって飯縄(いいづな)火山の噴出物や湖沼性の堆積(たいせき)物などの第四系が分布している。西部山地を構成する新第三系の大部分は、新生代新第三紀の中新世(ちゅうしんせい)から鮮新世(せんしんせい)(およそ1,000万年から200万年前)の時代に、河川によって運ばれてきた泥・砂・礫(れき)などの砕屑(さいせつ)物が海に堆積した海成(かいせい)層である。しかし、盆地西縁(せいえん)部や陣場平(じんばだいら)山・篠(しの)山などには新第三紀の海底や陸上に噴出した火山岩類が分布している。これらの地層の厚さは、総計4,000~5,000mに達している。

 西部山地を構成する新第三紀層は、犀(さい)川・裾花(すそばな)川・浅川などの谷沿いによく露出しているので、これらの地層の岩相(がんそう)や構造を観察することができる。これらの新第三紀層は、全体として北西側に傾いているためもっとも古い下位の地層が盆地の西縁(せいえん)部に露出し、河川の上流の北西側へ行くにつれ上位の新しい地層が重なっている。


表2-2 西部山地の層序

 裾花川沿いはこの地層の重なりが見られる代表的なルートであり、盆地側から上流に向けて最下位の流紋(りゅうもん)岩質の火山岩類からなる裾花凝灰(ぎょうかい)岩層の上位に、泥岩や砂岩からなる論地(ろんじ)泥岩層・大久保砂岩泥岩層、海底火山の噴出物からなる荒倉(あらくら)山火砕(かさい)岩層、貝化石を多く含む荻久保(おぎくぼ)砂質泥岩層、砂岩や礫岩からなる猿丸(さるまる)層が重なっている。犀川沿いでは、盆地の縁を構成する裾花凝灰岩層の上位に、論地泥岩層・大久保砂岩泥岩層・城下砂岩礫岩層が重なっている。浅川沿いには、盆地西縁部ではもっとも古い時代の浅川泥岩層の上位に、裾花凝灰岩層・論地泥岩層・大久保砂岩泥岩層・荻久保砂質泥岩層・猿丸層が重なっている。

 第四系には、新第三紀層を不整合(ふせいごう)におおって分布する、砕屑物からなる堆積物と火山噴出物とがある。砕屑物からなる堆積物には、礫層の水内(みのち)層、信更町付近に分布する礫・砂・シルトからなる灰原(はいばら)層、湖成(こせい)堆積物の高野層、大峰面(おおみねめん)形成期の堆積物、地すべりや崖錐(がいすい)などの崩積(ほうせき)堆積物、風成(ふうせい)の火山灰層、湿地の堆積物、河川沿いの段丘堆積物などがある。第四紀に噴出した火山岩類には、飯縄火山の噴出物、髻(もとどり)山をつくる火山岩、郷路(ごうろ)山をつくる火山岩、貉(むじな)郷路山をつくる火山岩、黒岩をつくる火山岩などがある。飯縄火山を除けばいずれも小さな火山体で、新第三紀層を貫いて噴出したものである。