城下砂岩礫岩層

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長野市南西部の犀川沿いには、砂岩層や礫岩層など比較的粗粒な堆積物からなる地層が分布する。これを八木・八木(1958)は、城下砂岩礫岩層と呼び、中条村の城下付近を模式地とした。この地層は、下位の大久保砂岩泥岩層に整合に重なり、長野市では信更町の吉原から三水(さみず)、涌(わく)池から下平、大安寺から笹平などの地域に分布する(写真2-34)。層厚は犀川沿いで約1,000mと厚いが、東側では薄くなる。


写真2-34 大安寺橋北の城下砂岩礫岩層

 岩相は、主として中粒~粗粒の塊状砂岩層と礫岩層からなる。下部層は、黄褐色の砂岩層に富んでいる。長野市に隣接する中条村の市之瀬の裏の沢や五十里(いかり)における砂岩層には、カキの化石層や貝化石の密集部が発達し、貝化石の豊富な地層である。七二会の除沢下流には、層厚40~50cm以下の亜炭層が数枚はさまれる。また、この下部層には、久米路(くめじ)火砕岩層をはさみ、この地層の上下には火山起源の砂粒からなる砂層がよく発達する。この火山性の砂層は、黒色の細粒~中粒の塊状砂岩層で、輝(き)石や角閃(かくせん)石の結晶やスコリア質の岩片を多く含んでいる。

 上部層は礫層がよく発達する。礫層は細礫~中礫の円礫層であり、チャート・粘板岩・砂岩・安山岩・ひん(〓)岩などの礫種からなり、これらの古期岩類は北アルプスから運ばれたものである。礫岩層の基質は砂岩からなり、固結度は比較的良い。安庭(やすにわ)の南にあたる水篠(みすず)橋から水内(みのち)発電所にかけての河床に露出する砂岩層には、貝化石やウニなどの軟体動物化石が見られる。また、長野市に隣接する犀川の左岸側には、カキの化石層が何層も見られる。

 城下砂岩礫岩層は、砂岩層・礫岩層・亜炭層などの岩相から見て、浅海から陸域にかけての地域における堆積物である。このことは汽水(きすい)域の化石の豊富さでも裏づけられている。

 城下砂岩礫岩層の分布は犀川沿いに限られ、北部へ連続しない。しかし、裾花川流域に分布する荒倉山火砕岩層や荻久保砂質泥岩層は、同時期の堆積物である。城下砂岩礫岩層の年代は鮮新世である。