荒倉山火砕岩層

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下小鍋(しもこなべ)から荻久保(おぎくぼ)にかけての県道沿い、および裾花ダムの両岸に分布する安山岩質の溶岩・火砕岩を荒倉山火砕岩層(写真2-36;竹下ほか,1960)という。分布は陣場平(じんばだいら)山や中条村の虫倉(むしくら)山で広い。層位は、下位の大久保砂岩泥岩層を整合におおい、上位の荻久保砂質泥岩層・猿丸(さるまる)砂岩礫岩(れきがん)層にアバット関係を示す(加藤・赤羽,1986)。矢野・村山(1976)は、陣場平山(写真2-37)南西方から虫倉山・荒倉山にかけて、下位層とは不整合である、としている。


写真2-36 荒倉山火砕岩層


写真2-37 陣場平山溶岩

 岩相は矢野(1981b)のくわしい研究によって、下部と上部に二分されている。市内に分布するのは折橋向斜東翼の下部と、上部の一部である。

 層厚は、下部は350~900mで虫倉山の北東でもっとも厚く、上部は450~1,100mで戸隠村の蔵が川でもっとも厚い。

 岩相は、安山岩溶岩と同質の火砕岩からなる。下部は岩相・層厚の変化が大きいが、上部は比較的単調である。

 下部:自破砕溶岩・凝灰角礫(ぎょうかいかくれき)岩などを主とし、塊状(かいじょう)溶岩・火山角礫岩・火山礫凝灰岩・凝灰岩などさまざまな岩相をともなう。虫倉山から鬼無里(きなさ)村親沢付近にかけては、ほとんど溶岩からなり、この外側には火砕岩が発達する。これらを構成する岩石は、かんらん(橄欖)石普通輝石安山岩と普通輝石安山岩からなり、一部で角閃(かくせん)石を含む輝石安山岩や角閃石安山岩などをレンズ状にはさむ。また包有物として、斜方(しゃほう)輝石単斜輝石斑れい(糲)岩・単斜輝石角閃石斑れい岩・かんらん石単斜輝石角閃石斑れい岩・角閃石斑れい岩などと、角閃石・斜長石の巨晶を産する。

 上部:塊状溶岩を主体として、自破砕溶岩・火山角礫岩・凝灰角礫岩・火山礫凝灰岩・凝灰岩などをともなう。戸隠村蔵が川から追通(おっかよう)付近では溶岩が卓越し、周辺は火砕岩からなる。岩石は、主に紫蘇輝石(しそきせき)普通輝石安山岩と角閃石紫蘇輝石普通輝石安山岩からなり、包有物としては、角閃石はんれい岩や、3cm大の角閃石が知られている。

 火山岩と包有岩片の化学組成を表2-4に示す(Takeshita and Oji, 1968 ; Takeshita,1975)。また表2-6には、陣場平山の安山岩の化学組成を示す(53ページ参照)。


表2-4 虚空蔵山・荒倉山の化学組成

 長野市内におけるこの層の構造は、走向北東、傾斜は北西へ20~45度である。

 この層中からも化石が報告されている(矢野,1981b)。