飯縄火山岩類

51 ~ 51

飯縄(いいづな)火山(写真2-44)については、山崎(1896)以来、山田(1934)、八木・八木(1958)ほか多数の研究が知られており、最近ではHayatsu(1976)、早津(1976)、早津・新井(1980,1982a)などによって、くわしい研究がおこなわれている。以下には早津の一連の研究の要点をまとめる。


写真2-44 飯縄山

 飯縄火山(1,917.4m)は、小川層・柵(しがらみ)層などを基盤岩として、西京背斜(はいしゃ)・折橋向斜(こうしゃ)(高府(たかふ)向斜)の上に形成された、開析の進んだ複式成層火山からなり、山頂には北西に開く直径2.2kmの馬蹄(ばてい)形カルデラと、9個の小型円頂丘がある。火山の大きさは、底径約5km、噴出物の被覆面積180km2、体積25km3である。火山体は、溶岩流・火砕流・降下堆積物・岩屑(がんせつ)なだれなどから構成されており、岩石は輝石安山岩を主とし、角閃石安山(かくせんせきあんざん)岩-デイサイト・玄武岩をともなう。火山の形成史は三十数万年前の古期、20~15万年前の新期に二分される。噴火記録はない。

 古期火山岩類は溶岩流と火砕岩類などからなり、カルデラ内や外輪山の山麓に分布する。岩石は角閃石をともなう輝石(きせき)安山岩質のものが多い。新期火山岩類は溶岩・火砕流・降下堆積物・岩屑なだれ堆積物などからなり、分布は広い。岩石は輝石安山岩を主とし、玄武岩・角閃石安山岩・デイサイトなどからなる。これらのうち、市内に分布しているのは古期の上ヶ屋(あげや)溶岩層・黒滝スコリア層・飯縄火砕流堆積物・飯縄山溶岩層と、新期の火山麓扇状地堆積物・湖沼堆積物などである。