貉郷路(むじなごうろ)山安山岩

52 ~ 53

芋井(いもい)にある小火道岩体で、地下浅所で固結した火道部が侵食によって露出したものである。大久保層(長野市,1988)を貫く。大きさは直径200m、比高約70mあり、まわりから中心に向かってやや傾斜する。四~六角の柱状節理(ちゅうじょうせつり)が発達している。岩体の表面には、最大の厚さ20cmの急冷相があり、母岩の大久保層の泥岩は微弱な接触変成で、変色・固化している。母岩がはげ落ちた岩体の表面は、緩やかにうねっており、一部にひび割れ(早津ほか,1996)が見られる。このひび割れは、岩体表層部の急冷固化後に、内部の高温部が若干流動したためにできたものである。

 岩石は淡青灰~暗灰色のピジョン輝石紫蘇(きせきしそ)輝石普通輝石安山岩(八木・八木,1958)で、SiO2は岩体内部は55%、急冷相部は56%で、Al2O3に富む(表2-6の1と2)。K2Oは、Gill(1981)の中間カリ領域に点示される(図2-13)。

 カリウム-アルゴン年代は0.26±0.02Ma(早津ほか,1996)である。この年代値の若さは、この地域の地すべりや崩壊の激しさを強く示唆するものである。