大峰面形成期の堆積物

53 ~ 54

更新世(こうしんせい)前期後半に形成された大峰面は、侵食平坦(へいたん)面であるため堆積物を広く残していないが、局部的に地形面形成期の堆積物を残している。これらはこれまで山砂利などと呼ばれてきた(本間,1931;小林,1953)。長野付近のこれらの堆積物は、富士ノ塔山・地附(じづき)山付近、陣場平(じんばだいら)山周辺に局所的に分布する。

 富士ノ塔山の山砂利は、西部の992mの山頂周辺およびその東の駐車場付近に分布する。山頂部から北斜面を少し下がった標高830mの浅間池周辺にも山砂利起源の安山岩礫(れき)やチャートなどの古期岩類が分布するが、これらは地すべりによって上位から移動したものである。仁科(1972)は、この富士ノ塔山の北斜面930m高度の駐車場切り割りで、基盤の裾花凝灰(すそばなぎょうかい)岩層をおおう厚さ3mほどの泥流堆積物を確認した。この泥流堆積物は、スコリア質の粘土化したローム状の基質と径70~100cmの輝石(きせき)安山岩の角礫からなり、上部にはチャートなどの円礫が交じる。この泥流堆積物は、安山岩の特徴から飯縄火山起源のものとされた。冨沢(1995)は、標高992mの山頂部に径240~100cmの輝石安山岩の礫(写真2-47)が十数個散在分布し、これらは古飯縄火山岩類(竹内・竹下,1965)に属するものであるとした。


写真2-47 富士ノ塔山北西峰の山頂部に分布する古飯縄火山岩類の巨礫

 地附山と大峰山との鞍部(あんぶ)から地附山にかけては、チャートなどの古期岩類などの細礫を含む砂礫層が分布する。これらは旧河川の堆積物である。

 飯綱高原の縁に当たるオリンピックのボブスレー・リュージュ会場付近から大池にかけての標高800~900m付近には、シルト・砂・礫からなる河川成の堆積物や泥流堆積物が10~30mの層厚で分布する(写真2-48)。礫層は古期岩類の細礫からなり、泥流堆積物には径1.5mほどの古飯縄火山岩類の輝石安山岩の亜円礫が含まれている。これらは下位の猿丸層を不整合におおっている。


写真2-48 飯綱高原の縁に分布する大峰面形成期のシルトや砂礫層

 陣場平山山麓の小野平などでもチャートなどの古期岩類の細礫~中礫が確認され、さらに陣場平山の地蔵峠の北、標高1,170mに同様な礫層が分布する。富士ノ塔山の安山岩礫は、裾花川の谷ができる前に飯縄火山から運ばれたものであり、その他の古期岩類の砂礫層は北アルプス方面から河川によって運ばれてきた堆積物である。これらはいずれも大峰面形成期の堆積物である。