長野盆地は、第四紀中ごろに形成された内陸の盆地である。この盆地には、盆地形成初期以降の時代の堆積(たいせき)物が堆積している。これらの堆積物の大部分は、盆地の地下に隠されており、直接見ることは困難である。しかし、それらの一部は盆地の縁に残されており、これらを根気よく調べることによって、長野盆地にたまった堆積物を知ることができる。また、近年になって盆地内部の地下水調査や温泉探査のために、しだいに深いボーリングがおこなわれるようになり、盆地内部のようすも少しずつ明らかになってきた。
現在の長野盆地は、周辺山地から流下する河川による扇状地堆積物や氾濫原(はんらんげん)の堆積物によって埋積されている。過去の時代にも現在と同様な状態が長くつづいたが、ときには湖や湿地の時期もあった。
盆地の西縁(せいえん)部には、盆地の過去を解きあかす資料が地層という形で断片的に残されている。盆地内を埋積した地層には、さまざまな種類の地層がある。もっとも代表的な堆積物は、扇状地を形成した扇状地堆積物や洪水時に氾濫して堆積した氾濫原堆積物である。このほか湿地の堆積物や湖に堆積した湖成層、盆地の縁近くに堆積した崖錐(がいすい)堆積物、崖錐堆積物と扇状地堆積物の中間的な性格をもった押し出し堆積物、段丘堆積物などがある。
これらの地層は、時代的には大きく四つの時代に区分することができる。もっとも古い地層は、盆地形成初期(更新世(こうしんせい)中期初め)の地層であり、湖に堆積した地層である。この地層は豊野層と呼ばれる。つぎの地層は、更新世中期から後期にかけての地層であり、南郷(みなみごう)層と呼ばれる。ついで更新世後期末の最終氷期の地層である。最新の地層は、1万年以降の完新世(かんしんせい)の地層である。