盆地の西縁部に発達する主要な扇状地は、北から浅川・裾花(すそばな)川・犀(さい)川、東縁部には保科(ほしな)川・藤沢川・蛭(ひる)川・神田(かんだ)川などの下流域にみられる。規模的には東縁部の扇状地は小さい。扇状地の規模は、基本的にはそれぞれの扇状地を構成する堆積物の量であり、それは河川の流域面積および水量に比例する。したがって、犀川・裾花川・浅川の順に小規模になる。
扇状地を構成する堆積物は、どこでも砂礫(されき)層を主とし砂層やシルト層をはさむ。これらの堆積物は、いずれも河川の流域から運ばれたものであり、それぞれの扇状地で後背地の地質を反映して異なっている。犀川の扇状地堆積物は、北アルプス方面からのチャート・スレート・花崗(かこう)岩類などの堆積物で占められる特徴的な堆積物である。裾花川の扇状地堆積物は、新第三系の堆積岩類や火山岩類を主とし、第三系の礫岩から由来する古期岩類の礫なども含まれている。盆地東縁部の扇状地堆積物は、後背地の新第三紀火山岩類や深成岩類の礫を主としている。
扇状地は最近になって形成されたものだけでなく、盆地が形成されてくる過程でも存在していたはずである。しかし、この古い時代の扇状地堆積物は、完新世の扇状地堆積物におおわれ盆地下に隠されてしまっているので、その堆積物を野外で観察することができない。わずかに裾花川などでは、扇状地堆積物が河川によって侵食され段丘化しているので、古い時期の扇状地堆積物の一部を観察することができる。なお、前述した南郷層は、この古い時期の扇状地堆積物の一部に当たる堆積物である。同一の扇状地における古期と新期の扇状地堆積物は、礫種などの構成物は類似であるが固結の程度に違いがみられ、古いものほど固結している。