崩積(ほうせき)堆積物には、崖錐(がいすい)堆積物・押し出し堆積物や地すべり堆積物が含まれる。盆地西縁部の崖錐堆積物は、裾花凝灰(すそばなぎょうかい)岩層分布域にたくさん分布する。いずれも分布規模は大きくないが、断層沿いや急斜面の下などに分布する(写真2-62)。東縁部では、火山岩類からなる山地に発達する沢の上流部に崖錐性の堆積物が各所に分布するが、規模は小さい。
押し出し堆積物は、町田(1961)によって押し出し地形と区分された地形を構成する堆積物である。押し出し地形は、崖錐と扇状地との中間的な性格をもった地形で、崖錐性堆積物がさまざまな営力によって下方に押しだされて形成された地形である。このような地形を構成する堆積物は、長野盆地の東縁部に典型的に発達する。長野市での代表的な場所は、若穂(わかほ)の山新田や保科(ほしな)の南西斜面である。
地すべり堆積物は西縁部にのみ分布する。西縁部に分布する豊野層や浅川泥岩層の分布域では、小規模な地すべりが発生している。規模の大きい地すべり堆積物は、北部の吉(よし)、地附山(じづきやま)地すべり地、浅川の地すべり地帯、篠ノ井の瀬原田から有旅(うたび)にかけての地域などに分布する。