地すべり防止区域は「地すべり等防止法」(昭和33年法律第30号)に規定された工事区域であって、主務大臣が指定し、官報に掲載して一般に告示することになっている。防止区域には、現に滑動している区域のほか、地すべりを誘発助長する区域も含まれる。
長野市では、西部山地にはげしく褶曲(しゅうきょく)した第三紀層が広く分布していることから、地すべり発生の箇所が多く、平成5年9月現在で152ヵ所が地すべり防止区域に指定されている。その合計面積は2,161.27haで、長野市の総面積(404.35km2)の5.3%を占めている。
西部山地に発生している地すべりは、地形的にみると標高600~900mの範囲に集中し、その上下で急減している。地質的には泥質岩の優勢な地層の分布地域に多発している。その多くは流れ盤型(地すべりの方向が地層の傾斜方向と一致し、両者のなす角が45度以下のもの)である。また、地すべり面の浅い(10m以下)浅層型が多く、地すべり面の深い地塊型の大規模なものは特殊な条件のもとに発生している。いっぽう、東部山地には、数は少ないが、温泉変質帯で発生する地すべりが見られる。この地すべりは、温泉の硫気(りゅうき)作用によって生じた粘土が地すべり発生の素因となっている。
著名な地すべりとしては「茶臼山地すべり」が古くから知られている。また、1847年の善光寺地震によって発生した「倉並地すべり」や1985年発生の「地附(じづき)山地すべり」などは大規模地すべりの代表的なものである。