退く海(猿丸(さるまる)層)

93 ~ 94

猿丸層が堆積しはじめた300万年前になると、海岸線は現在の裾花川沿いまで退き、その裾花川沿いには遠浅の砂浜が広がっていた。浅川流域地域では、扇状地性の三角州が形成され粗粒の堆積物を堆積していた。このような環境で猿丸層の下部・中部の時代は、浅くなったりやや深くなったりを繰りかえしながら、厚い砂層や礫層を堆積した。中部の後半になると、浅海域であった場所は潟(かた)や砂丘など陸域の環境が広がり大きく環境が変化した。上部層の時代になると海は北へさらに退き、長野市地域は完全に陸域となった。陸域はきわめて粗粒な礫層を堆積する扇状地性の平野となり、網状の河川が発達した。

 いっぽう、この時代には大規模な酸性凝灰岩の堆積がおこなわれた。厚い凝灰岩の噴出源は定かでないが、これらの一部は西方の松本盆地東部や北アルプスでの火山活動による噴出物であり、大規模な火砕流によってもたらされたものを含んでいる。なかには長野盆地の周辺から噴出したものもありそうである。