飯縄(いいづな)火山の誕生

94 ~ 95

盆地西縁部の活断層は、西上がり東落ちの運動を繰りかえした。これによって西部山地は少しずつ隆起し、この隆起地域に噴出したのが飯縄火山である。

 飯縄火山の活動は古期と新期に分けられている。古期は中期更新世の初めに当たり、新期は20~10万年前の時期である。現在みられる山体は、新期の火山活動によって形成されたものである。古期の噴出物は、安山岩質の溶岩と火砕(かさい)堆積物からなる。新期の噴出物は、玄武(げんぶ)岩質や安山岩質の溶岩や火砕堆積物からなり、活動は成層火山形成期・カルデラ形成期・溶岩円頂丘(えんちょうきゅう)形成期の3期に分けられている。

 盆地の西縁部では、活断層によって切りきざまれ丘陵が形成され、これらは階段状の地形をつくった。また、西縁部の山地と盆地との比高が大きくなるにつれて、西縁部を構成する裾花凝灰岩層は不安定となり崩壊が進み、崖錐(がいすい)性の堆積物を形成した。この特異な岩相は、中期更新世中期から後期更新世にかけて堆積した南郷(みなみごう)層の代表的な岩相である。