旅行中、なにげなく窓を通して外を眺めていると、風景ばかりでなく土壌の色も変わっていくことに気づくことがある。
たとえば、千曲川の川辺を行くと褐色や灰色をした畑地や水田に気がつく。また、飯縄(いいづな)の山麓(さんろく)には、黒っぽい色をした柔らかな土壌が一面に広がっている。
いっぽう、七二会(なにあい)や小田切(おたぎり)の傾斜地を歩くと、畑や山道の切り通しには褐色をした土壌が広く分布している。
このように市域に見られる土壌を垂直的に眺めると、もっとも標高が高い飯縄山の山頂周辺は、土層の発達がなく岩石地が分布している。そして、山腹から山麓にかけての飯縄火山地は、黒色土や黒ボク土によっておおわれている。やや下がって亜高山帯から低山帯にかけてと丘陵地には、主に褐色森林土が広く分布している。そのなかで、浅川から芋井(いもい)や小田切、七二会、信更(しんこう)町など市域の北から西にかけて地形的にやや緩斜面には、灰色台地土やグライ台地土が分布している。
また、飯縄山麓の大池や蓑ヶ谷(みのがや)池周辺の湿地には、泥炭土が小範囲であるが形成されている。さらにくだって茶臼山(ちゃうすやま)山地の南部に位置する信更町には、更新世(こうしんせい)の間氷期に生成された古土壌、すなわち赤色土を見ることができる。
長野盆地の周辺は、山地から押しだされた堆積(たいせき)物によって犀(さい)川・裾花(すそばな)川・浅川・保科(ほしな)川や、松代などの扇状地が形成されている。ここには低地水田土や褐色低地土が分布している。
千曲川や犀川によって形成された盆地の中央を占める沖積地や氾濫原(はんらんげん)には灰色低地土が、後背湿地にはグライ低地土や泥炭土が、自然堤防には褐色低地土が帯状に連続している。