山地土壌の分類基準

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日本の森林についておこなわれている土壌の分類基準は、概説でも述べたとおり、まず、主として気候によって大分けされ、つぎに主として地形の変化にともなって小分けされる。

 土壌ができていくうえで大切な気候要素は、気温と降水量の二つであり、その組み合わせにしたがっていろいろな土壌ができあがる。日本の森林地帯の大半を占める温暖多雨の気候下では、「褐色森林土」と呼ばれる酸性のあまり強くない土壌ができる。

 これに対して、日本アルプス一帯や木曽谷などのように低温多雨の気候下で針葉樹林があると、「ポドゾル」と呼ばれる酸性の強い灰色の土層をもつ土壌が多くできる。

 また飯縄(いいづな)山や浅間山のような火山の山麓(さんろく)には、主として火山灰を母材料とする「黒色土」がよく分布している。気候とは直接の関係はないが、これも大分けされた土壌の一つである。

 これらを「土壌群」と呼び、さらにいくつかの亜群と土壌型に分けられる。

 褐色森林土についてみると乾性・弱乾性・適潤性・弱湿性・湿性の各土壌型に分けられる。ただし、これらの区分規準は単なる土壌の湿りぐあいによるのではなく、傾斜の有無大小がもたらす土壌水分の移動が原因となって生まれる、場所ごとの水分環境の違いをあらわしている。場所によるこの水分の違いはつぎのような仕組みが働いてできる。

 日本の山地は、一般に地形の起伏がいちじるしいため、狭い範囲でも場所による水分環境の違いが大きい。たとえば、尾根すじでは降雨があっても、水分は多くが地表を流下し、あるいは土壌中の孔隙(こうげき)をとおって、ゆっくりと山腹を下方へ移動していく。このため尾根すじの土壌は乾きやすい。逆に中腹から沢沿いには、いつも水分が集まり、土を湿らせる。