飯縄(いいづな)山の南麓(なんろく)には、黒味が強く軽くて細粒質の土壌が広く分布している。この土壌は乾燥したときにその上を歩くと、まるで灰の上を歩いているようにボクボクとなる。また、日差しの強い夏など農作業で汗にまみれると、衣服を通して微細な土壌粒子が肌に付着する。
この土壌の起源は、更新世(こうしんせい)から完新世(かんしんせい)にかけて火山が爆発したさいに噴出した火山灰や、火山砕屑物(さいせつぶつ)が風によって運ばれてきて、堆積(たいせき)したものが母材を構成している。
この火山灰などが排水条件のよい場所で風化されると、アロフェンやイモゴライトなどの粘土鉱物が生成される。その結果、表層に腐植が集積したり、リンが強く固定される。このような性質をもった土壌を黒ボク土という。関東では俗称として黒ノッペ、赤ノッペと呼び、長野県では赤土、カルゴ、味噌(みそ)土などと呼んでいる。
黒ボク土が日本の耕地面積に占める比率は約20%で、畑では50%に達している。
市域の黒ボク土は全体の2.2%強で、大部分が畑作に利用されている。そのなかで水の便に恵まれたところは水田になっている。