山地土壌と林木の生育

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長野市の山地には、さきに述べたような各種の土壌が分布しているが、主体をなす褐色森林土と黒色土についてみると、主として地形にもとづく水分環境の変化により、乾性から湿性までの各土壌型に区分される。これは同時にまた林地の生産力の区分でもある。その理由はつぎのとおりである。

 一般に土壌水分中にはいろいろな物質が溶けており、各種の植物養分も水分の動きにつれて移動する。この土壌水分が、つねに流れさる尾根すじの土壌は乾性となり、一般にやせ地である。

 これと対照的に土壌水分が、いつも上部から集まってくる中腹から沢沿いには、適潤性ないし湿性の土壌が分布し、一般に肥沃(ひよく)地であることが多い。また平坦(へいたん)地ではかべ状の層ができていたり、水はけが悪いため、湖沼の周辺のような極端な場合には泥炭土ができたりして、普通の林木の生育には不適当な土壌条件になっていることがある。これらについては、前述の各種の山地土壌の特性のところでみたとおり、土壌の酸性の強弱や、土壌有機物の分解の良否、最小容気量や透水速度の大小など、土壌の理化学性の面から説明することも可能である。

 こうして広い山地も、土壌群や土壌型ごとに肥沃度や理学的性質が異なっており、気候や地形の変化にともなう林地生産力の違いが、樹木の天然分布や、人工林(植林地)の生育状態をさまざまに変化させている。そのようすは、ちょっとみると複雑であるが、気候の差が小さい狭い地域では、土壌の性質に対応し、規則的に変化するのが普通である。付属の「土壌図」を「林地生産力区分図」とみなして利用することもできる。