(1) 長野盆地の豊かな稲作と歴史

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 長野盆地ではその地理的条件と豊かな農産物を背景に、日本の歴史を変えてしまいそうな大きな二つの事件が過去にあった。

 その一つは、戦国時代にしばしば繰りかえされた川中島の戦いで、もう一つは、太平洋戦争末期に本土決戦を予定した日本軍が進めた、大本営を松代に移転する建設工事であった。

 前者に関しては、天下統一を企てた武田信玄が、甲府盆地では満たされない食料基地として、千曲川と犀川によって形成された広大で生産力の高い水田地帯を入手しようとした。そして長いあいだ執ようにこだわりつづけた結果、ついに上京の機会を失ってしまった、といえなくもない。