市域5地区の開拓地のうち、現在営農が健全なのは、栄峰と飯綱のみになってしまった。この地域の開墾直後の土壌肥沃度はきわめて低かった。一例として、1955年(昭和30)に調査した栄峰の土壌分析成績を表3-21にのせた。これをもとに作成した報告書ではつぎのように提言した。
土壌は黒色~黒褐色の腐植層をもつ黒ボク土で、軽鬆(けいしょう)膨軟で容水量が大きく、乾燥すると風食を受け雨水や融雪時には水食が発生する。またリン酸吸収係数がきわめて大きく、有効リン酸を欠き、置換性石灰も少なく酸性が強い。この改善対策にはアルカリ資材とリン酸資材の投入がきわめて有効である。また、地力の維持・増進には堆(たい)きゅう肥や、有機物を毎年施用することが大切である。
この提言は飯縄山麓原野を開畑する場合の原則で、現在も変わらない。黒ボク土は物理性が良好であるから、土壌の化学性を改善すれば高原野菜にとってもっとも適した土壌となるといえる。