降水中の化学成分

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長野市における降水中の化学成分については、薩摩林・佐々木(1979)の調査した結果によると、成分のなかでSO42-が全体の36%でもっとも多く、次いでNH4+、Cl-、Ca2+、NO3-、Na+の順である。

 長野市の降水は、冬期を除くと内陸起源といわれている化学成分のCa2+、NH4+、SO42-、NO3-の占める割合が高く、年間の平均値でもこれらの成分が全体の77%を占めており、海水の飛沫(ひまつ)や粒子の影響を強く受けるNa+やCl-の割合が低いのが特徴である。なお、表4-1中の1976年4月26日は、黄砂現象があった。


表4-1 降水中の化学成分濃度(一雨ごと) 1975年8月~1976年7月

 Na+やCl-の濃度は冬期に高くなり、とくに1月は夏期の5倍以上である。これは冬の季節風の影響を受けており、長野市が日本海に近いので海塩粒子が運ばれやすいためと考えられる。内陸起源のCa2+、NH4+、SO42-、NO3-などの成分は、月ごとの変化が大きく、濃度はつねに変動している。


図4-1 化学成分の経月変化(一雨ごと)
(薩摩林・佐々木,1979による)

 つぎに、1993年(平成5)の長野市の降水の平均pHは5.0で、自然の雨のおよその値5.6(この値より小さい数値が酸性雨とされる)より低い値である。1994年の環境庁の調査によると、全国の各都市の平均pHは、東京は4.6、札幌は4.7、北九州は4.5であり、長野市を下回っている地方は多い。

 長野市の酸性雨の主な原因となるSO42-とNO3-を県内の他の地域と比べてみると、平均的な値である。二つのイオンの多い八方尾根は、年間通じて降水量が多いので、全体としてとくに酸性が強いわけではない。石油などの燃焼と関係があるSO42-は、降水量と相関関係にあり、八方尾根のほかに信濃町や木曽、飯田地方でも比較的多い。自動車の排ガスと関連するNO3-は、降水量とは必ずしも一致せず、軽井沢町や飯田市、富士見町などで多い。また東信地方のSO42-/NO3-の比は、ほぼ都市型を示しており、首都圏の大気の影響が考えられる。長野市の場合は、首都圏の影響は受けていない。


図4-2 県内の地域別月平均降水量および陰イオン降下量 (『信濃毎日新聞』1994.6.15による)