2 降水中の放射能

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 佐々木ほか(1988)は科学技術庁の委託を受けて1976年(昭和51)~1987年の間、長野市(県衛生公害研究所)において、降雨ごとに採取した降水中の放射能を測定した。

 この結果によると、中国において核爆発実験が頻繁におこなわれた1978年までは、全β放射能の濃度が高くなっている。1978年3月18~19日は62,800pCi/Lが最高であった。しかし、1980年10月の大気圏における最後の中国の核実験の影響が残った1981年以降は、降水中の放射能の濃度は減少している。また1986年4月に起きた、ソ連のチェルノブイリ原子力発電所の事故による影響が5月にみられたが、6月には事故以前の値に戻っている。

 大気圏における核爆発実験や原発事故等の放射能の汚染がなかったときは、降水中の放射能の濃度はほとんど検出下限値付近あるいはそれ以下であり、放射能汚染のない平常時の放射能レベルはほぼこの程度と考えられる。

 また1986年5月の県内における降下物中の全β放射能降下量は、上田市や岡谷市、諏訪市は低く、塩尻市や大町市は高い。長野市は平均的な値である。


図4-4 降水中の放射能濃度の経年変化 (佐々木ほか,1988による)


図4-5 県内の地域別降下物中の全β放射能降下量 (佐々木ほか,1988による)