地下水は、千曲(ちくま)川・犀(さい)川など河川の周辺部の沖積層と長野盆地の周縁部の洪積層に多く、わが国の地下水の90%はこの二つの層から汲み上げられている。
地下に浸透した雨水や河川の伏流水は地下水となって流動し、土壌や岩石と接触するあいだにさまざまな物質を溶かしこんでくる。
地下水には停滞しているものと流動しているものがある。地表水と違って砂礫の間隙(かんげき)をぬって流動するので、その流速は数mm/時から数十cm/時程度ときわめて遅く、その周辺の土壌や岩石との接触時間が長いために、河川や池沼のような地表水より遥かにその周辺の土壌や岩石の影響を受け、その地域特有の水質を示すようになる。
谷・断層・切通し・扇状地の末端など帯水層の一部が地表に露出するところでは地下水が湧きだして「泉」ができる。古来、日本人は水のでる場所に「水神様」をまつり、水を大切にしてきた。長野市内には各所に昔から親しまれてきた名水がいくつもあった。なかでも「善光寺の七清水」は古くからよく知られている湧水であったが、その大部分は枯渇し、現在は長野市水道工事共同組合が建てた「善光寺の七清水」の紹介の立て札にその名残をとどめているにすぎない。しかし、松代(まつしろ)町皆神山麓(みなかみさんろく)に湧き出ている「松井の泉」、若槻田子(たこ)神社の「御膳水」、若穂綿内の「東勝寺の霊水」など長野盆地の周縁部には数多くの泉が湧き出ており、昔から村人に利用され市民の生活のなかに深く位置づいている。