犀川扇状地における地下水のpH分布

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1954年(昭和29)犀(さい)川扇状地の地下水の化学分析を試みた。このあたりは今井学郎・小出武らによって犀川扇状地と呼ばれ断面図が作られているが、この断面に沿って水温とpHの変化を調べ、犀川扇状地のpHの分布図を作成した。冬期の測定であったので、犀川の伏流水が南部に浸透していくにつれて水深が深くなることも加わって、水温はしだいに高くなっている。pHの値は二酸化炭素に支配されることが多いが、ここでは温度の上昇による二酸化炭素の溶解度の減少を上回って地中からの吸収がおこなわれ、その結果地下水の浸透にともなってpHの値が減少したものと思われる。


図4-16 鍛治沼より広田に至るpHと水温の変化(1954年)

 地下水面の海抜等高線図によれば、地表面が南東部に傾斜しているのに対して、地下水面は南部に傾斜している。したがって犀川の伏流水が扇状地の内部に流れこんでいることになるが、この推論は犀川扇状地のpHの分布状況からも証明される(図4-17)。


図4-17 犀川扇状地における地下水のpH分布(1954年)

 他方、川中島町今里の一部と阿弥陀堂(あみだどう)地籍においては、地下水面が東部に傾斜しているので、この地域の地下水の供給源は前記北部のほかに西部を流れる上中堰(せぎ)の伏流水が考えられる。しかし、現在各堰が三面側溝となって以来、堰からの浸透が不可能になり犀川扇状地の供給源は犀川からの伏流水一本にしぼられてきているのではないかと思われる。