千曲川

180 ~ 182

粟佐(あわさ)橋①から関崎橋⑤までの間、5ヵ所の調査による千曲川の流程変化をみるとNa+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl-、SO42-、HCO3-ともにイオンの含有量はほとんど変化が認められない。電導度も170μS/cm前後である。しかし、犀川の水に薄められた落合橋下の合流点下⑥、村山橋⑦では各イオン・電導度の値が減少している。その後、小布施(おぶせ)橋⑧では再び増加傾向を示している。

 当地域でのイオンの平均当量百分率をみると陽イオンではCa2+>Na++K+>Mg2+、陰イオンではHCO3->Cl->SO42-の関係があり、陽イオンではCa2+が49%、陰イオンではHCO3-が48%を占めている。


図4-24 千曲川の流程変化(1993.6.25)

 季節的変化をみるとBOD*は0.5~2.7mg/Lの範囲にあり、9~10月を最低として2月が最高に達している。また、大腸菌群数は12月の1.4×103MPN**/100mLが最低で、7月には93×103MPN/100mLと約70倍の値を示している。

 pHは平均7.1で中性河川であるが、晴れの日の日中のpH値はかなり上昇し大きく変化している。とくに夏季の日変化はいちじるしい。これは河床の石の表面などに繁茂する藻類などの光合成の影響によるものと考えられる。

 これらの水生植物は水中の二酸化炭素や炭酸塩などの炭酸物質を分解して二酸化炭素を補給して光合成がおこなわれるために、水中の水酸化物イオンOH-が増加してpHが上昇し、アルカリ性を示すためである。

 HCO3-→CO2+OH-


図4-25 千曲川における水質の季節的変化(1991~92)
(長野県1991「水質測定結果」より作成)


図4-26 千曲川における水質の時間的変化(落合橋下)(1994.7.21)

 関崎橋で調査した水質の経年変化をみると、1987年(昭和62)以降、各成分ともに減少傾向にあり、BODでは2.5mg/Lから1.9mg/Lへ、COD***では6.5mg/Lから3.5mg/Lへ、全リンでは0.34mg/Lから0.15mg/Lへ、大腸菌群数においても76×103MPN/100mLから38×103MPN/100mLといずれもその含有量がおよそ2分の1程度に減少しており、アンモニア性窒素も平均0.09mg/L、全窒素も平均2.0mg/Lと好ましい方向に推移してきている。


図4-27 主要河川における水質の経年変化(1985~93)(長野県1985~93「水質測定結果」より作成)


写真4-12 千曲川(関崎橋を望む)

BOD* 生物化学的酸素要求量。河川水などの有機物による汚濁の程度を示すもので、水のなかに含まれる有機物質が一定時間、一定温度のもとで微生物によって酸化分解されるときに消費される酸素の量をいい、数値が高いほど有機物の量が多く、汚れが大きいことを示している。

MPN** 最確数Most Probable Numberの略。細菌数の定量法の一つである倍数希釈法を用いて推定・確定・完全の三種類の試験をおこない、これから得られた数を確率論的に処理し100mL中の細菌数を算出した理論上の数値。

COD*** 化学的酸素要求量。河川水などの有機物による汚濁の程度を示すもので、水中の汚濁物質を酸化剤によって酸化するときに消費される酸素の量をいう。数値が高いほど有機物の量が多く汚れが大きいことを示している。