保科(ほしな)川

184 ~ 185

長野市の河川の大部分が中性か弱アルカリ性であるのに、当河川は強酸性を呈する特殊な河川である。とくに上流の鬼の露次(ろじ)ではpH2.9を記録している。上流部は石英閃緑(せんりょく)岩が熱水変質作用を顕著に受けているところで、岩石中に含まれている硫化鉄の風化で硫酸ができるために強い酸性を示している。この水は岩石から鉄やアルミニウムを溶かしだし、多量のSO42-を含むが、西ノ入川・持者(じしゃ)川・笹平沢・高岡沢などの支流の水で薄められ酸性もしだいに弱まってくる。

 上流から中流にかけて河床が赤褐色を帯びているのは、酸性の度合が弱まり多量に溶けている鉄分が水酸化鉄として河床に沈着したためである。さらに酸性が弱まる下流部の在家(ざいけ)・須釜付近の河床では、それまで溶けていたアルミニウムイオンが水酸化アルミニウムとなりケイ酸とともに沈殿し、河床の岩石や堰堤(えんてい)が白色を帯びるようになる。このようにpHの変化にともなって河相の変わる特殊な河川でもある。


写真4-16 赤褐色を帯びた保科川の河床
(持者)


図4-30 保科川の流程変化(1993.7.24)


写真4-17 白色を帯びた保科川の堰堤(須釜)

 電導度をみると、上流の窓岩①から湯原③までは減少し、引沢④から下流にかけて増加している。中流から下流にかけてNa++K+・Cl-が増加しているのは、生活雑排水の混入によるものと考えられる。

 下流の双子橋⑥では電導度が638μS/cmとかなり高い値を示しており、Cl-をはじめNa+・K+・Ca2+・SO42-を多量に含んでいる。当河川では陽イオン中Ca2+が59%、陰イオン中SO42-が61%を占めており、赤野田川と同じようにCa2+とSO42-がとくに多い河川である。