裾花川

187 ~ 188

奥裾花(おくすそばな)峡ダム①からあやとり橋⑧の間、8ヵ所の調査結果をみると、電導度は75~248μS/cmの範囲にあり、茂菅(もすげ)⑥までは増加傾向を示し、相生(あいおい)橋上⑦で再び減少している。他のイオンについても同じ傾向が認められる。これは里島発電所からの放流水により薄められたためと考えられる。里島発電所の水は、比較的イオンの含有量が少ない小鍋(こなべ)地籍の裾花川から取水しており、この放流に起因している。


図4-35 裾花川の流程変化(1993.6.12)

 発電所への取水のために小鍋より下流の裾花川は流量も極端に少なく、善光寺温泉や生活雑排水の混入が大きく影響している。

 流量の少ない時期の茂菅では、上流でのCa2+>Na++K+、SO42->Cl-の関係が逆転してNa+は1.28me/L、Cl-は0.74me/Lとかなり高い値を示している。しかし、裾花川本流の流量の多い時期での調査では、土合参宮橋④より下流の流程変化は、ほとんど認められない。


写真4-20 流量の少ない裾花川(茂菅橋上流)

 裾花川のイオンの平均当量百分率をみると、陽イオンはCa2+>Na++K+>Mg2+、陰イオンではHCO3->SO42->Cl-の関係があり、陽イオンではCa2+が45%、陰イオンではHCO3-が57%を占めている。このような当量百分率からみて、裾花川は犀川や千曲川とよく似た水質といえよう。


図4-37 裾花川の流程変化(1993.10.29)

 pHの平均値は8.5と弱アルカリ性を示し、流下するにつれて大きくなる傾向がある。

 相生橋で調査した水質の季節的変化をみると、BODの最低値は1月の0.5mg/L、最高値は3月の3.6mg/Lであり、大腸菌群数の値も小さい。また、1985年(昭和60)~1993年までの経年変化(図4-27)でも千曲川や犀川に比較して全窒素・全リン・アンモニア性窒素の含有量がきわめて少ない水質といえよう。しかし、1991年以降、大腸菌群数の値が急激に増大してきていることが気になるところである。


図4-36 裾花川における水質の季節的変化
(1991~92)
(長野県1991「水質測定結果」より作成)


写真4-21 裾花川(丹波島橋より合流点近くを望む)