これまで各河川の流程変化を中心に、それぞれの河川の特徴をみてきたが、ここでは水質区分図(キーダイヤグラム)を用いて当地域の河川の特徴を類型化し総合的に考察を試みた。水質区分図で明らかなように、千曲川右岸に合流する東部地域を流れる大部分の河川は、陽イオンではCa2++Mg2+が多く、陰イオンではSO42-+Cl-の多い典型的なⅢのアルカリ土類非重炭酸塩型に属している。とくに保科(ほしな)川・赤野田川・藤沢川はその特徴がよくあらわれている。
神田川・聖(ひじり)川・岡田川はⅠのアルカリ土類重炭酸塩型に属する河川である。
浅川水系の河川は陽イオンではCa2++Mg2+、陰イオンではHCO3-の割合が多いのでⅠのアルカリ土類重炭酸塩型であるが、隈取川はCa2++Mg2+とSO42-+Cl-の割合が多いⅢのアルカリ土類非重炭酸塩型である。
犀川右岸に合流する信更(しんこう)地域の支流はⅢのアルカリ土類非重炭酸塩型に近い水質である。いっぽう、左岸に合流する陣場平系統の支流はⅠとⅢの中間のアルカリ土類型である。また、犀川左岸と裾花(すそばな)川右岸に合流している旭山系統の支流は陽イオンではNa++K+の割合が多く、陰イオンではSO42-+Cl-とHCO3-の割合がほぼ等しいので、ⅡとⅣの中間のアルカリ型に属する水質である。
裾花川左岸に合流する飯綱系統の支流は、Ⅰのアルカリ土類重炭酸塩型に属する。
塩沢鉱泉の影響を受けている湯福川は、Ⅳのアルカリ非重炭酸塩型である。
日本の河川の大部分はⅠのアルカリ土類重炭酸塩型に属するのが一般的であるが、当地域は地質の影響や温泉・鉱泉の混入によって別のタイプを示している河川が比較的多い。
また、同一河川でも保科川・蛭(ひる)川・湯福川のように途中で温泉・鉱泉の流入によってイオンの相対量が大きく変化する場合がある。これらの河川の流程変化をみると、陽イオンではアルカリ土類金属(Ca、Mg)からアルカリ金属(Na、K)の多い水質へと変化し、陰イオンではSO42-の減少にともなってCl-が極端に多くなる方向に変化していることがわかる。