湖水の水質

203 ~ 204

1991年(平成3)の長野市水道局『水質年報』をもとに記述する。

 水の色は暗緑色で、透明度は0.40~1.60mで、季節変動し、春季は落ちるが8月下旬から秋季は回復する。一般的な湖水より透明度が低いのは、緑藻類や珪藻(けいそう)類の増加によるものとみられる。

 臭気は、春夏の表面水において微藻臭で、夏季の深層水では微腐食臭である。

 水温は、8月までは上昇するがその後下降する。表面水は深層水より変動差が大きい。垂直分布によると、6月と8月は深さ10mで急激に水温が変化している。これは躍層になっていて、水温差は6月が10.1℃、8月が8.4℃で、上下の水は安定している。この躍層の傾向はすでに4月下旬からあらわれている。6月下旬からは夏季成層期と考えられる。

 しかし、9月からは、水温差がしだいに小さくなり、11月下旬には1.1℃になる。これは上下の交換によるもので、この期間が秋季循環期であろう。


図4-54 裾花ダム湖の水温・溶存酸素・水質の垂直分布(1991.4)
(長野市水道局 1994『水質年報』による)

 表層水の溶存酸素は多いが、年間通じて変動が小さくほぼ飽和状態である。しかし底層水の溶存酸素は少ない。これは底層に光が届かないために植物プランクトンからの酸素の補給がおこなわれず、表層水からの拡散や水の交換、移動による場合しか酸素が補給されないためであろう。溶存酸素の消費が上まわる底層では、無酸素の状態になり、それが6月の3.4mg/L、8月の0.2mg/Lという小さい値になったのではないかと考えられる。

 pHは表層水では7.2~7.6で、微弱アルカリ性である。4月から8月は中性ないし微弱酸性に傾く。垂直変化は、躍層の付近を境にpHの値は小さくなる。

 電導度は、アルカリ度AIKとほぼ似た垂直変化を示し、深さ5mと30m付近が高い値である。季節変化と合わせてみると、4月の表面水の全窒素は710μg/L、全リンは62μg/Lが最高であるが、6月になると深さ10mで全窒素は670μg/L、全リンは57μg/Lになる。富栄養湖的な性格である。


図4-55 裾花ダム湖の水温・溶存酸素の経月変化(1991.4)
(長野市水道局 1994『水質年報』による)