長野市にかかわる気候区分と境界

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冬の季節風のもとでは山脈の影響で場所による天候の違いがきわめて大きく、日本海側の多雨・寡照・湿潤に対して、太平洋側は少雨・多照・乾燥となって対照的である。この日本の気候の二大区分のなかにも場所による固有の気候型式がある。そこで長野市周辺での気候区分をみるために、各観測所における気象要素の観測値を比較してみた。

 気温では、各観測所とも冬の低温と年間を通して高低の開きの大きさが目立つが、大きな相違は認められない。

 降水では、とくに冬の北西季節風の影響をみるために、年降水量に対して寒候期の降水の割合がどう変化するか比較してみた。

 月別降水量の年間降水量に対する割合(降水割合)のグラフでは、寒候期12・1・2月のグラフの変化型および降水割合(%)の大きさからみると、長野市は上田市や東京などと同じタイプで、太平洋岸気候に属するとみられる。これに対して、野沢温泉、飯山、小谷では寒候期の降水割合がいずれも10%を超し、グラフの形は上越市高田や金沢と同じタイプで日本海岸気候に属するとみられる。地理的に両者の中間に位置する信濃町、鬼無里(きなさ)、白馬のグラフは両気候の中間的な型となっている。つまり、この区域は日本の気候の二大区分である日本海岸気候と太平洋岸気候の県内における境界地帯とも考えられ、経験上の天候境界である高社-佐野坂線とも大体合っている。

 ただ長野市の降水割合で12月の値が11月より大きいのは、冬期には長野市にも北西季節風による日本海岸気候の影響があらわれているといえる。しかし、同じ市内でも犀川をはさんだ篠ノ井では、このことは認められない。

 以上みてきたように、長野市では気温の日較差や湿度の年変化型では、日本海岸気候のタイプとなる。しかし、月別(または旬別)降水量の年変化や降水割合などからみると、太平洋岸気候のタイプである。

 このように、長野市の気候といっても長野盆地の平坦(へいたん)地と山間地、犀川をはさんで北部と南部では、かなり違った様相を示している。総合してみると、太平洋岸気候区のなかの内陸気候区分に属するといえる。しかし、犀川より北では冬など日本海側の影響がよくあらわれ、日本海岸気候と太平洋岸気候を複合した中間的な気候とみるのが妥当と考える。


図5-6 各地における降水割合(1984~93年の10ヵ年平均値による)