長野市の年平均気温は11.5℃である。この数値は、『理科年表』(1994年版)に記載されているもので、長野地方気象台が1961年(昭和36)から1990年までの30年間観測した気温の平均値(これを平年値という)である。そして、この期間の長野地方気象台における月別平年気温、日最高気温・日最低気温の月別平年値は表5-4のようであり、図5-7はそれらの数値を図示したものである。
その土地の気候を表現するとき、気温の年変化と較差の大小は、降水量の大小やその年変化とともに重要な手がかりである。長野市とほぼ同緯度にある日本海側と太平洋側の沿岸部から金沢と水戸を選び、月平均気温の年変化を長野と比べたものが図5-8である。
長野の冬は1・2月ともに0℃以下で、金沢や水戸と比べると3~4℃の差があり、同緯度の沿岸部よりいちじるしく寒いことがわかる。しかし、長野では3月から5月にかけて気温は急激に上昇し、4月ごろには沿岸部との差もほとんどなくなる。このことは長野の冬の寒さはきびしいが、春の暖かさは急速にやってくることを示している。
長野の夏の気温は水戸とほぼ同じ値である。しかし、標高差を考慮すると長野の気温は金沢とほぼ同じくらいの値となる。これは長野が内陸の盆地のため日射により強く熱せられることが主な原因とみられるが、南東季節風によるフェーン現象も一因である。9月ごろから長野の気温は急激に下がり、沿岸部との差は増していく。
長野盆地のように周囲を山に囲まれ、海からも遠く隔たった内陸の盆地では、海による気温の緩和作用もなく、したがって気温の日較差は1年をとおして大きい。日較差の大きい月は、水戸では12月に11.9℃と冬にあらわれているが、金沢では4月の10.1℃、長野では4月と5月がともに12.3℃と春にあらわれている。
また、1年のうちでもっとも高い月平均気温ともっとも低い月平均気温との差(年較差)は、金沢23.7℃、水戸22.6℃に対して長野は26.0℃もあり、この値は北海道の内陸部につぐ大きな値である。