気温の経年変化

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気温は微気象的にみれば、同一時刻であっても場所が変われば異なり、同一地点であっても時間の推移とともに変わることを常としている。長野市の気温が、過去から現在までの時の経過のなかでどのように変動してきたかを、年平均気温の経年変化と10年の移動平均を示したものが図5-9である。10年移動平均は、気温変動の長期傾向をみるのによいといわれている。さらに,夏(6・7・8の3ヵ月間)と冬(12・1・2の3ヵ月間)の平均気温の経年変化を示したものが図5-10、図5-11である。このグラフの作成資料として、長野地方気象台の創設以来100年余にわたる観測記録(1889~1994年)を使った。


図5-9 年平均気温の累年変化と10年移動平均(1889~1994年)


図5-10 夏(6・7・8月)の平均気温の経年変化と10年移動平均


図5-11 冬(12・1・2月)の平均気温の経年変化と10年移動平均

 年平均気温の変化を10年移動平均からみると、1950年(昭和25)以前はおおむね低温に経過しているが、1950年以降は高温期に転じ1960年ごろがもっとも高く、その後下降傾向をみせるが、1970年ごろから以降は高温状態での横ばいが現在までつづいてきている。

 平年値の変化をみると、1891年(明治24)から1920年までの30年間の平均値は10.9℃であるが、1966年から1995年までの30年間の平均値は11.5℃で、長野市でも長期変化傾向をみると近年明らかに昇温傾向がうかがえる。これは都市化による昇温が大きく影響しているものとみられる。

 夏期(6~8月)の平均気温の10年移動平均の変動をみると、1910年(明治43)代の前半までは低温期であるが、後半からはおおむね高温傾向となって現在まで経過してきており、そのあいだに何回かの高温のピークが出現している。

 冬期(12~2月)の平均気温の10年移動平均の変動をみると、1910年代の前半まではほぼ平年並みで、その後1950年ごろまではおおむね低温傾向にある。1950年以降は高温傾向に転じて現在まで経過してきているが、この経年変化のようすは年平均気温の変化とよく似ている。

 都市気候に関するいくたの調査報告では、都市域の高温化が報告されているが、とくに冬の最低気温の高温化が顕著であると指摘されている。これは都市の発展に伴う人口の増加と集中化、コンクリートやアスファルトなど地表面の改造、石油やガスなど化石燃料の消費による熱や二酸化炭素の大量の放出などが原因にあげられている。

 1950年以降の長野市における年平均気温や冬の平均気温の高温傾向も都市化による影響が大きいと考えられる。