4 気温の垂直分布

252 ~ 253

 気温は普通上空に上るにつれて低くなっていくが、ときに上方へ上るほど高温となる場合を逆転といい、そのような空気の層(気層)を逆転層という。

 逆転層ができる原因の一つに接地逆転と呼ばれるものがある。天気がよく風がおだやかなときには、太陽が沈むころ、地面は放射のため急速に冷えはじめる。地面にごく接した気層では、日の入り1時間前くらいから気温が下がって逆転しはじめ、日の出1時間くらいまで逆転したりする。

 風のおだやかな早朝や夕方など、煙突の煙やたき火の煙などが上昇していき、逆転層に達したところで、それ以上上昇を続けることができずに横に広がっていく風景は、長野盆地でもよくみかけるところである。

 逆転層のでき方には、このように盆地に冷気が停滞する地形性のもののほかに、冬に多い冷気が上空から沈降してくる型のものや、夏に多い暖気が温暖前線により上昇する前線性のものなどがある。

 長野盆地北部における逆転層の高さの調査では、JR長野駅付近の地表面を基準として、7月に400~450m、4月に330m、10月に240m、1月に220mの高さであったという調査報告(霜田,1976)がある。


写真5-3 逆転層の存在を示す煙の動き