動植物の出現や開花など、生物界に見られる季節現象を生物季節というが、生物季節の観測結果から、季節の遅れ進みや気候の違いなど総合的に気象状況の移り変わりを知ることができる。生物季節には、対象によって植物季節と動物季節とがある。
生物季節観測の資料として、ここでは長野地方気象台の1892年(明治25)以来の長期にわたる観測結果を借用して表5-8とした。気象台では同じ気候の範囲内ということで、気象台の構内とともに気象台を中心として半径10km、標高差100mの範囲内で観測したものである。当然、標高が変われば活動の時期も変わるが、植物の活動の時期は一般に100m高さを増すごとに3~4日くらい遅れるといわれる。また、夏から秋にかけてはこの反対になる。
植物季節では、主として発芽、開花、紅葉の日を観測するが、なかでも代表的な現象としてはサクラの開花、イロハカエデの紅葉などがある。サクラは日平均気温が約10℃になると開花するので、市内でもサクラ前線が平坦(へいたん)地からしだいに標高の高いところへ移動していく、微妙な移り変わりが観察される。
動物季節は、動物が初めて姿を見せたり、初めて鳴き声を聞いた日を観測するが、近年都市化の進行や環境の変化により、ホタルなど観測がうまくできないものもあらわれてきている。ツバメの初見日は最高気温、終見日は最低気温のいずれも16℃前後になっている。
長野市内のサクラの花の同一日撮影のようすは次ページのようであった。