長野市の1年間の降水量は、938.3mmである。これは、長野地方気象台における1961年(昭和36)から1990年(平成2)までの30年間の平均値(平年値)である。
図5-21は、長野県の年降水量の分布図である。長野盆地から上田・佐久盆地にかけての千曲川沿岸地帯は1,000mm未満で、北海道東北部の800mmにつぐ日本での少降水量地域である。これは海からの影響が少なく空気中の水蒸気量が少ない内陸性気候の特性に加えて、周囲を山に囲まれているため台風や低気圧、前線などの影響が比較的少ないからである。
長野県は地形が複雑なため、降水量の地域分布も複雑である。
表5-9は、長野市の月別降水量であり、図5-22は、それをグラフにしたものである。また、比較のため日本海側の上越市高田、太平洋側の静岡市のものも表に入れた。
長野市域の降水に関する長期間の観測資料としては、長野地方気象台のほかに、長野市篠ノ井にある県立更級農業高等学校のものがある。現在は観測していないが、ここは以前長野地方気象台の委託観測所として、1892年(明治25)から1970年(昭和45)3月まで79年間にわたって気象観測をおこなってきた。1892年から1960年までの69年間の年降水量の平均は949.8mm、月別降水量の平均は表のとおりであり、そのグラフは長野地方気象台のもの(図5-23)と似たものとなる。
月別降水量では、長野市は梅雨の6~7月と秋霖(しゅうりん)の9月に多く、12月がもっとも少ない。
日本における月別降水量の年変化を見ると、最大のあらわれる月が地域によって異なる。大別すると、冬期北西の季節風にともなう降水(雪など)により12月または1月にあらわれる地域(飯山・高田など)、梅雨の影響により6月または7月にあらわれる地域(静岡・東京など)、および秋霖や台風によって9月ごろあらわれる地域(前橋など)に分類される。
長野県内の観測所では、北部県境付近を除いて6月か7月に最大があらわれていて、梅雨の影響が大きいことがわかる。長野市も最大は7月である。多雪地帯の飯山市や野沢温泉村の最大は1月で、冬の季節風の影響が大きい。このように北部県境に近い地方では日本海側の気候、その他では太平洋側の気候の影響が大きい。
図5-24は、長野市における降水量の1年間の変化をこまかにみるために、半旬別の降水量をグラフにしたものである。このグラフでみると、長野市で降水量のもっとも多い時期は6月26日から7月5日ごろであり、年間では梅雨と秋雨(秋霖)の二つの雨期が存在する。