上雪と呼ばれるものは、雪の多い北信地方ではなく、東信や中南信に多くの降雪をもたらす気象現象である。長野市では篠ノ井地区や松代地区に多くの降雪があり、犀川より北の地域では降雪が少ない状況になる。
このような現象は、本州南岸を通過する低気圧によって引き起こされる。低気圧が作り出す雲のなかでは雨滴や雪が作りだされる。雨滴も雪の結晶として雲のなかで成長し、落下中に解けて雨滴となる。本来雨滴として地上に落下し「雨降り」の日のはずが、「上雪」という降雪現象になるのは、大気中の気象条件が大きく影響をあたえている。本来成長した結晶が解け、雨滴となって地上に降り着くはずのものが、雪片のまま地上に落下してしまうばあいだといわれている。
冬季に降る雨や雪は、上空の雲のなかで小さな塵(ちり)やほこりを核(氷晶核)として水蒸気が凍りつき、小さな氷の結晶(氷晶)が発生する。その氷晶に大気中の水蒸気がどんどん取りこまれ雪の結晶として成長していく。
この結晶が雲から落下を始めて地上に達するまでのあいだに、解けて雨滴になるか雪片として降雪になるかを決定するのは、大気中の温度であるといわれている。表5-14は、雨滴にならず雪のまま地上に到着する大気中の気温の状態を示したものである。