(3) 下雪

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 長野市の降雪の多くは、下雪と呼ばれる降雪パターンである。この降雪機構はしばしば北信地域に大雪を降らせる。とくに飯山地方などでは1里1尺と呼ばれるほど、北の山岳部に向かって降雪が増加している。

 この降雪は、シベリア方面の大陸から吹いてくる乾いた北西の季節風が、暖かい日本海を吹き渡ってくるとき、水蒸気と熱エネルギーを十分吸収し積雲や層積雲を発生させる。これらの雲はさらに上信越の高い山にぶつかり、強制的に上昇させられ雄大積雲などに発達し、ときには雷を発生させながら激しい降雪を起こす現象である。


図5-32 日本海型の降雪現象 (『信州の気象百年誌』より)

 このタイプの降雪は長野市にも大雪を降らせる。とくに、信濃町寄りにある浅川地区など、長野市の北部に降雪が多いのはこの現象によっている。図5-33のように等圧線が縦じまになり、大陸方面に強い高気圧があらわれる気圧配置では、ときに新潟県や北陸地方では「雪おこし」と呼ぶ雷鳴や稲光をともなった激しい降雪が起きる。とくに、輪島上空5000mの気温が-35℃以下なら大雪になる可能性が強いといわれている。


図5-33 下雪の気圧配置
(1980年12月14日)

 長野市では、1日の最大降雪量が52cmという記録(1973年)がある。また、積雪の深さの最大値は80cm(1946年)という記録もある。ともに下雪のときである。

 図5-34は、1980年(昭和55)12月の下雪による豪雪のときの天気図である。季節風の吹き出しによって、上空5,000mで気温-40℃の寒気が朝鮮半島から日本海を渡っていくうちに水蒸気と熱を吸収し、積雲として発達しながら日本に到着した。この影響で、13日に長野市に降りだした雪は14日になっても降りつづき、市街地でも47cmの積雪を記録した。この記録は、1892年以来長野市の2番目の記録として今でも残っている。


図5-34 12月14日の県北部の降雪分布(cm)