湿度の年変化

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長野県の湿度をみるとき、内陸地方は海洋の影響が減るので、沿岸の諸地域と比べれば一般に湿度は低いのが通性である。とくに長野県は山脈とそれに囲まれた盆地や山間地などからなりたっているため、日本海や太平洋などの海から水蒸気を運ぶ気流は、山脈の風上側に雨や雪を降らせてくるために、県内を通る空気中の水蒸気量はかなり減っている。しかし、長野県内は標高が高いために沿岸地域に比べて気温が低く、そのため長野市など県内諸地点の湿度は年平均についてみればそれほど低くない。

 長野市の湿度を各地の湿度と比較したものが図5-38である。これを見ると、各地の年平均の差は小さいが、変化の位相には地域によって大きな相違があることがわかる。また、日本海岸気候と太平洋岸気候の相違が湿度にもはっきりとあらわれている。とくに冬の湿度は日本海側と太平洋側ではいちじるしい地域差がみられる。


図5-38 長野市および各地の湿度の年変化(統計期間1961~90年『理科年表』より)

 長野市の湿度の年変化の型は、日本海側のそれである。すなわち、長野市の湿度は日本で年間湿度がもっとも高い日本海側の各地より低いが、冬季極端に乾燥する太平洋側の諸地域より高い。これは長野の冬の気温が低いことのほかに、北西季節風が日本海の水蒸気を運びこむからである。


写真5-14 気温と湿度の日変化のようすの例
記録温湿度計による記録。上段が気温、下段が湿度である

 長野県内など内陸部各地の湿度の特徴は、4月から9月の湿度にあらわれている。この6ヵ月間の長野市の湿度を、沿岸地方と比べてみるといちじるしく低い値となっている。したがって、東岸気候の特性から日本の夏はたいへん蒸し暑いが、周囲を山に囲まれた内陸部の湿度には、このようないちじるしい特徴はあまりみられない。内陸の盆地では夏の気温は高くなるが、蒸し暑さはあまり感じない。